兵庫県立龍野高校(たつの市)に通っていた2007年5月、テニス部の練習中に倒れ寝たきりになった同県太子町の女性(24)と両親が県を訴えていた裁判で、22日の大阪高裁判決は学校側の責任を明確に認めた。学校や教育委員会の対応に不信を抱き、真相解明を求めて提訴し5年。両親は判決後、「学校は安全な場所であるべきだ」と声をそろえた。
女性が倒れたのは中間試験の最終日。11日ぶりの部活だった。顧問は途中で現場を離れ、キャプテンを任されたばかりの女性は顧問の指示で練習を引っ張っていたが、最後のランニング中に倒れた。
二審判決では、女性は熱中症で倒れたとした上で、「顧問は密度の高い練習メニューを女性に指示する一方、水分補給や十分な休憩時間を設定しなかった」などと指摘。
事故による深い絶望感や介護の負担などを考慮し、両親への慰謝料も認めた。
今回の裁判では事故後の学校側の対応も問われた。
一審神戸地裁判決は、当時の校長が事故の半年後、育友会の役員会で「倒れたのは心筋炎という病気。それなのに両親はお金のことばかり言うなど、無理難題を突き付けられ困っている」と発言したと認定。「学校長の発言に配慮に欠ける点は否めない」と指摘した。
その判断は二審でも変わらなかった。
両親によると、校長の発言を受け「子どもは病気で倒れたのに、学校からお金を取ろうとしている」-といううわさが広まったという。
この日の判決後、父親(52)は「親子で学校に苦しめられた。学校は安全な場所であってほしい」と語った。
女性は今も寝たきりで話ができず、目も見えない。床擦れを防ぐため、2時間おきに体位をかえるなど24時間態勢の介護が必要だ。母親(52)は「これからは100%の時間を介護に使える。家族で支え合っていきたい」と娘を思いやった。(紺野大樹)
【住友剛・京都精華大教授(教育学)の話】
学校側の責任がはっきりと認められ、評価できる判決。判決を機に、顧問がいない場合でも安全に過ごせるよう、学校は教師と子どもに熱中症をはじめとする事故防止の意識を徹底させるべきだ。
両親への損害賠償が認められたのは、子どもが学校でいじめや事故に遭った保護者たちが積み重ねてきた活動の成果だろう。学校への不信感は説明、謝罪、再発防止策が不十分なことから生じる。問題が起きた際の対応には被害家族の視点を取り入れるべきだ。
意義ある判決だと思います。
事実を真摯に受け止めてほしいと切に願います。
社会全体で子ども達の安全を守ること、命を育むことについて
真剣に考えていかなければならないと思います。