朝日新聞の特集「小さないのち」
子どもの防ぐことのできる死と向き合うために、
死因検証の仕組みの重要性、
子どもの安全と事故を未然に防止するという理解について
社会全体で考える機会に繋がることを願います。
2016年8月31日付けの朝日新聞「小さないのち」に記事が掲載されました。
掲載記事はこちら:2016年8月31日付け 朝日新聞「小さないのち」(PDF形式)
川遊び中の事故、後絶たず ライフジャケットでリスク減
「屋外も注意 水の事故」
大好きなピアノ教室に向かう車の中。吉川慎之介君(当時5歳)は突然言い出した。
「お母さん、僕が生まれてうれしかった?」
「もちろん! すごいうれしかったよ」。母の吉川優子さん(45)が答えると、慎之介君は「ありがとう」と笑った。
その次の日に事故は起きた。12年7月、愛媛県西条市。私立幼稚園のお泊まり保育での川遊び中、水かさが増し、慎之介君が流された。150メートル下流で見つかったが、助からなかった。園側はライフジャケットを着用させていなかった。今年5月には、元園長に業務上過失致死傷罪で罰金50万円の有罪判決が言い渡された。
川やプールなどで子どもが溺れて亡くなる事故は繰り返されている。警察庁によると、11~15年に全国で272人の子どもが死亡・行方不明になった。河川が127人と5割近くを占める。
人が溺れる原因を研究する栗栖(くりす)茜医師によると、人はパニックになると呼吸回数が安静時の5倍になることもあり、自分では息を止められず、大量の水を飲んでしまう。「ライフジャケットを着けることでリスクを減らせる」と話す。
事故を繰り返してほしくないとの思いは、吉川さんも同じだ。昨年、事故予防を考える「子ども安全管理士講座」を始めた。「子どもの死を防ぐ制度を作らないといけない。それは、しんちゃんが生きた証しにもなる」
慎之介君の事故を教訓に刻んでいる人たちもいる。
事故があった川の近くで自然体験施設を運営するNPO法人・西条自然学校もその一つ。施設利用者らが川遊びをする際、希望者にライフジャケットを貸し出している。
NPOの山本貴仁理事長は「利用者からよく『この川は泳げますか』と質問されるが、川遊びの経験や水泳の技量によって一概には答えられない。街の作られた安全空間で過ごす感覚のまま、自然の水辺に来ている印象がある。不慣れだと川の異変に気づくのが難しい。ライフジャケットは着ておくべきです」と話す。
(板橋洋佳、滝沢卓)
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