日本小児科学会と国立成育医療研究センター(東京)は、子供の死に関する詳細な情報を収集、不慮の事故など背景の把握を通じて再発防止につなげる「子供死亡登録・検証制度」導入に向け、試験調査を開始した。東京都、群馬県、京都市、北九州市の2都県2市の医療機関を対象に、過去1年間に経験した5歳未満の死亡事例を分析、年内に結果を取りまとめる。
日本は先進国の中で、1~4歳の死亡率が比較的高いと指摘される。小児科学会は将来的に全国で検証制度を整備し、子供の死亡率低減に役立てたい考えだ。
試験調査は、死亡診断書だけではつかめない死亡の背景を明らかにするのが目的。例えば溺死の場合、海や川、浴槽などどういった場所で発生したか、直前に子供や保護者が何をしていたかなどを調べる。あざなど虐待が疑われる形跡の有無を意思が確かめたかも質問し、児童相談所への通報など適切な対応がとられていたか確認する。また、救急搬送を断った病院の有無、受け入れ先決定まで要した時間も把握、小児救急の整備状況が子供の死にどう影響するのか検証する。
東京都での調査は、2011年1~12月の死亡例を対象に1300以上の医療機関に協力を求め、担当医や救急隊員から聞き取りを実施。ほかの調査対象地域では大規模病院を中心に様さ票を郵送、担当医に記入してもらっている。
こうした取り組みはチャイルド・デス・レビュー(CDR)と呼ばれ、米国や英国などで導入されている。医療、保健福祉、教育、司法など多職種で情報を分析、死亡率低減に一定の効果があると報告されている。
国立成育医療研究センターの森臨太郎医師は「貴重な情報を地道に集めて子供の死をどう防ぐか検証することで、制度導入の機運を高めることにもつながる」としている。森井氏ら関係者は7日、制度の根拠となる法整備を求める要望書を内閣府に提出した。
「まず広く知ってもらう」
◆日本子ども家庭総合研究所の衛藤隆所長の話◆
子供が不慮の事故や病気などで死亡した場合に詳しい情報を集めて原因を洗い出すことは、類似事例の予防に有効と考える。
ただ、こうした取り組みは日本では浸透しておらず、まず国民に広く知ってもらって理解を得る必要がある。全国で同じ水準の情報収集、検証体制を整備するには行政を中心に他分野の関係機関との連携が欠かせず、積極的に協力を呼びかけるべきだ。
愛媛新聞2013年6月8日朝刊 記事を見る
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