平成28年2月3日、4日、5日証人尋問が行われました。

2016年平成26年2月3日、4日、5日
松山地方裁判所で証人尋問が行われました。
(事件番号:平成26年(わ)第81号)

刑事裁判の証人尋問、前半3日間が終了しました。
11名の方々が愛媛県内をはじめ、中四国、関東や関西など、
遠方からも、この裁判のために証人として出廷をして下さいました。
皆さん、検察官や弁護人の質問に、誠実にこたえていました。

2月3日は、石鎚ふれあいの里へ観光に来ていた方2名と、
ふれあいの里のスタッフ2名の証人尋問が行われました。
事故当日、現場で通報や救命救助・捜索活動をしてくださった方々です。

慎ちゃんを発見したふれあいの里スタッフの方は、
川に沈んでいた様子について、目を閉じ、
言葉を選び一生懸命に説明して下さっていたのですが、
その後ろに見えた近藤被告元園長は「居眠り」をしていました。

村上玲子被告、越智亜里被告は、
慎ちゃんがうつ伏せの状態で沈んでいたところを引き上げ、
人口呼吸をしたが自発呼吸は見られなかった、
先生たちは誰もいなかった、という話についても、
真摯に耳を傾けるわけでもなく、表情一つ変えずに、ひたすらメモをとっていました。

救助活動をした4人の証言と当日の写真などから、
引率教諭は8人いたわけですが、誰一人、通報も救助活動も何もしていない事や、
川の中で遊ぶ範囲を定めず、子どもたちを深い場所でも
バラバラに遊ばせている状況などが明らかになりました。

証人の方々が、あの日、あの場にいなかったら、
被害はもっと大きなものになっていたはずです。

2月4日は、天候や川遊びの準備、増水のメカニズムについて等、
客観的な証拠についての証人尋問が行われました。

松山気象台の職員の方には当日の天気予報や大気の状態などについて、
事故当日、石鎚山で登山をされていた方からは、
山頂付近で激しい雨が降った状況について、
河川財団の方からは、川遊びの注意事項とライフジャケットや準備の重要性について、
愛媛大学名誉教授で水文学専門の先生からは、
川の増水メカニズムについて、尋問が行われました。

平成24年7月29日に事故当時とほぼ同時刻に、
ふれあいの里で現場の加茂川が増水する様子を撮影することができたのですが、
水文学の先生が証言の中で、この動画資料について触れられました。
29日の測水データから24日と同じような増水が発生したであろうという事が、
データグラフから確認することができたとの事でした。
29日の動画資料を確認していただけいたことが、遺族としては有り難く思いました。

この2日間の証人尋問から、
当日の様子と状況が明確になりました。

2月5日は、気象協会の職員の方から天気予報について、
西条市立ひまわり幼稚園の元園長からは、
ふれあいの里でのお泊まり保育の準備状況、中止の判断、
職員間での情報共有などについて、
同志社女子大の教授からは、幼稚園教諭の養成課程のシラバスについて、
幼稚園教諭に求められる安全に関する知識や意識について、
証人尋問が行われました。

西条市立ひまわり幼稚園の元園長先生は、
子どもたちの安全を第一に考えていることや心優しい人柄がにじみ出ていました。
先生の証言から、マリア幼稚園のお泊まり保育の準備や計画の杜撰さが明確になりました。

同志社女子大の先生は、被告側の証人でしたが、大変、勉強になりました。

幼稚園教諭が子どもの安全を守るというのは当然の事であり、
保育活動の安全を考える際、主に、園内、園庭での安全確保が大前提で、
自然活動という場合は、園内で植物を育てたりすることなどがそれにあたり、
園外活動というのは、近所の公園など管理できる範囲でしか行えないと考えていて、
川や海などでの活動は、園児にとって想定されるリスクが大きく広すぎるため、
そもそも、保育の中で、管理できないような活動を行うことは想定していない、
というような説明がなされました。
保育活動として、川や海などでの活動をするという点については、
もし、行うとした場合は、地域の方々や保護者も一緒に
多くの大人たちの見守りがあってということでなら
有り得るかもしれない、というような説明もありました。

幼稚園教諭の使命とは、子どもの命を守り育むことであることが
一番大切にしなければならない理念であることを、
改めて、理解できたように思います。
子どもたちにとって、安全で適切な環境を整えるのは大人の責務です。
それぞれの立場、役割の中で、責任を持って対策を講じるということは当然の事です。

次回は2月18日です。
ふれあいの里責任者、お泊り保育引率教諭で元担任の寺西佳代子氏、
慎之介が沈んでいく姿を最後に見た篠田ひとみ氏の尋問があります。
被告側証人として、大阪市大の教授からは、
「後知恵バイアス」というものについての説明がなされるようです。

傍聴席も法廷です。
民事裁判の際にいつも来ている
学校法人ロザリオ学園の事件担当者と言われている方が
傍聴席で、白い歯を出して談笑している姿や
近藤惠津子被告の「居眠り」をしている姿からは
事件に対する誠実さなどは感じられず
心が痛みました。

このような些細なことを気にしたくなくても
遺族にとっては、すべてが悲しい現実です。

証人として出廷してくださった方々は、
誠実な方ばかりでした。
被害者参加人として、身の引き締まる思いです。
私も、誠実に向き合います。

第十回口頭弁論期日

第十回口頭弁論期日
H27年12月25日(金)14時00~
愛媛県松山地方裁判所 西条支部
口頭弁論準備が公開の法廷で行われました。

今回は、私達から準備書面の中で、
被告の主張に対し、以下の説明を求めました。

 (1)被告ら主張の「鉄砲水」により本件事故現場において増加した水量
 (2)本件事故現場において(1)の水量の増加に要した時間
 (3)被告ら主張の「鉄砲水」により本件事故現場において水位が
    上昇した高さ,および水位上昇の速度 

原告側 準備書面(10)(PDF)

   
被告側からの回答は無ありませんでした。
前日12月24日から始まった刑事裁判の捜査資料と
これから行われる尋問の内容等を民事でも証拠として提出したいという事は
私達も同じ考えで、裁判長も捜査資料を検討したいという事から、
次回は、裁判資料の扱いについて話し合いをすることになりました。

期日は、
平成28年3月16日 午後15時~
愛媛県松山地方裁判所 西条支部
ラウンド法廷で非公開となります。

翌日17日の刑事裁判では
松山地裁にて論告求刑が行われる予定です。

 

刑事裁判、初公判に関する掲載記事

平成27年12月24日の刑事裁判、初公判に関する掲載記事です。

平成27年12月25日

愛媛新聞(PDF)

朝日新聞(PDF)

読売新聞(PDF)

毎日新聞(PDF)

 
<愛媛新聞より>
被害者参加制度で公判に出席した父吉川豊さんは閉廷後
「園から事故原因の報告は無く、裁判で被告がどう考えているのか知りたい」と話した。

水難事故で元園長ら無罪主張  

水難事故で元園長ら無罪主張  12月24日 

NHK松山放送局

 
3年前、西条市の川で、幼稚園の行事で水遊びをしていた当時5歳の男の子が増水した川に流され死亡した事故で、十分な安全対策を講じていなかったなどとして、業務上過失致死傷の罪に問われている幼稚園の元園長ら3人の初公判が開かれ、元園長らは「川の増水を予想することはできなかった」などと述べ無罪を主張しました。

平成24年7月、西条市の加茂川で、幼稚園の行事で教諭らの付き添いのもと水遊びをしていた園児らが、増水した川に流され、このうち、吉川慎之介くん(当時5歳)が死亡2人がけがをしました。
幼稚園の元園長の近藤惠津子被告(74)と元教諭らあわせて3人が、川が増水する可能性があることを予見できたにもかかわらず、遊泳を中止せず、必要な安全対策を怠ったなどとして、業務上過失致死傷の罪に問われています。

24日、松山地方裁判所で開かれた初公判で元園長らは、「川が突然増水することは予想できなかった」などと述べ無罪を主張しました。
検察は冒頭陳述で、「急に川が増水しうることは事前の情報収集で予見できた。浮き輪や救命胴衣など救助のための道具も一切用意していなかった」と指摘しました。

これに対し弁護側は、「急激な増水や突然の濁流は自然災害で予見することは不可能だった。事故当時、天候は晴れていて増水のきっかけすら感じることはできなかった」などと主張しました。
裁判のあと、吉川慎之介くん(当時5歳)の両親の吉川豊さんと優子さんは報道陣の取材に「事故から3年が経つが、あのとき何が起きたのか知りたいという私たちの気持ちは当時と何も変わっていない。裁判を通して、なぜ事故が起きたのか、慎之介がなぜ死ななければならなかったのか元園長らにはきちんと向き合ってほしい」と話していました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・引用終了・・・・・・・・・・・・・・

今後の刑事裁判の日程

平成28年2月3日(水)から証人尋問が始まります。
公判スケジュールは以下の通りです。

2月3日
(水)
10:00~終日 救助活動に参加した観光客
目撃者
検察側証人
救助活動に参加した観光客
目撃者
救助活動に参加した目撃者
当時のふれあいの里の従業員
救助活動に参加した目撃者
当時のふれあいの里の従業員
2月4日
(水)
10:00~終日  気象台職員
降雨体験者(石鎚山登山者)
河川財団職員
愛媛大学教授
2月5日
(木)
11:00~終日 気象協会職員
同志社女子大学教授 被告側証人
愛媛県内の幼稚園元園長 検察側証人
2月18日
(木)
10:00~終日 マリア幼稚園引率教諭(当時担任)
寺西佳代子
マリア幼稚園引率教諭 
篠田ひとみ
ふれあいの里責任者
大阪市立大学教授 被告側証人
3月3日
(木)
10:00~終日 被告本人尋問
近藤被告、村上被告、越智被告
3月4日
(木)
10:00~ 被告本人尋問
近藤被告、村上被告、越智被告
3月17日
(木)
10:00~ 論告
吉川 意見陳述予定
3月28日
(月)
10:00~ 弁論 

何卒よろしくお願い申し上げます。

H27年12月24日 初公判を迎えました。

    平成27年12月24日
    近藤恵津子被告、村上玲子被告、越智亜里被告の初公判が開かれました。
    不幸にも起きてしまった事故に対して、刑事上の責任はないと全員無罪を主張しています。

    遺族としては、
    この事故が、なぜ起きてしまったのか、どうすれば防ぐことができたのか
    どうすれば、尊い命を守ることができたのか
    考えていただきたいと思います。

    以下、検察の冒頭陳述より。

    罪名:業務上過失致死傷

     
    【Ⅰ被告らの立場】
    被告人近藤は、幼稚園の園長として、園務全体を統括し、
    園児の生命・身体の安全を守る職務を行うにあたり
    他の教諭を監督する立場にあった

    被告人村上は、幼稚園の主任教諭として
    園児の生命・身体の安全を守る職務を行うにあたり
    他の教諭に対して指導・助言し、園長を補佐する立場にあった

    被告人越智は、幼稚園の年長園児の行事であるお泊り保育の平成24年度における
    計画立案者及び進行責任者として、お泊り保育において園児の生命身体の安全を守る職務を行うにあたり
    その生命・身体の安全に十分配慮して立案し進行すべき立場にあった

    平成24年度におけるお泊り保育は、被告人越智が被告人村上に相談しながら計画立案し
    最終的に被告人近藤の了解を得て実施された。

     
     
    【Ⅱ事故状況及び死傷結果】

    1.園児らを遊泳させた経緯
     1)被告人3名は、平成24年7月20日、本件幼稚園の教諭であった
      寺西香代子、篠田ひとみ、別宮瑠美、藤井さおり、石川正子と共に、
      お泊り保育のため、年齢5歳から6歳の年長園児31名を、
      愛媛県西条市中奥1号25番地1所在の宿泊施設「石鎚ふれあいの里」に引率した。

     2)被告人らは、同日午後3時頃から、ふれあいの里の西側を
      概ね南方から北方に流れる加茂川において、園児を遊泳させ始めた。

    2.遊泳場所の状況
     1)加茂川の状況
      加茂川は、石鎚山系から山間部を流れる河川であり、その流域が広く、
      複数の支流が交わっており、ふれあいの里付近のみならず、
      上流の山岳部での天候の変化によって、容易に増水が起こり得る地形である。

      ふれあいの里は、加茂川右岸に面しており
      (上流から下流を見た場合に。右側を「右岸」、左側を「左岸」という。以下同じ)
      本件事故現場は、ふれあいの里北側のグランド前を流れる河川内であって
      同所付近の加茂川右岸には、西向きに下る方面に石積みされた護岸堤防があり、
      南北に2箇所、石段(以下それぞれ「南寄りの石段」「北寄りの石段」という)が
      設置されていて同石段がふれあいの里のグランドから河川への入水口となっている。

      一方、本件事故現場付近の加茂川左岸には河川敷が広がり、その左端にはコン
      クリート擁壁が設置され、その上の主要地方道に続く小道が設けられている。

      
      水深は右岸側が左岸川よりも深くなっており、河床は、岩や石が散開していて
      平ではなく、こけが生えており、成人でも滑ることがある状態であった。

     2)園児らの遊泳場所の状況
      被告人らは、園児を誘導して、北寄りの石段から加茂川に入水させ、
      概ね両石段の間を遊泳場所にさせていた。

      園児らは、加茂川右岸寄りの河川内から左岸の河川敷まで散開して遊泳しており、
      被告人ら引率教諭は、その周辺に点在して園児らを監視していた。

      遊泳を開始した時点で、右岸寄りには園児の胸付近まで浸かるような水深の箇所が
      あった一方左寄りには比較的浅瀬が広がっていた。

    3.加茂川上流域における降雨
     1)平成24年7月20日午前10時頃から同日午後零時ごろまでの間、
      石鎚山周辺の上空を雨雲が通過していた。
     
     2)石鎚山成就社から石鎚山山頂付近にかけて、
      同日午前10時過ぎ頃以降、降雨があり、時には雷を伴う激しいものであった。

     3)松山地方気象台が石鎚山成就社に設置したアメダスでは、
      同日午前9時から午前10時までの1時間に2.0ミリメートル、
      同日午前10時から午前11時までの1時間に3.5ミリメートル、 
      同日午前11時から午後零時までの1時間に0.5ミリメートル、
      同日午後零時から午後1時までの1時間に2.5ミリメートルの降雨が観測された。

     4)黒瀬ダム管理事務所が大平雨量観測所に設置した雨量計では、
      同日午後零時から午後1時までの1時間に1ミリメートルの降雨が
      観測された。

     5)前記黒瀬ダム管理事務所が東之川雨量観測所に設置した雨量計では、
      同日午前10時から午前10時までの1時間に3ミリメートル、
      同日午後零時から午後1時までの1時間に1ミリメートルの降雨が観測された。

    4.園児らの遊泳場所付近における増水
      加茂川上流域における前記降雨の結果、園児らの遊泳場所付近より上流に
      住友共同電力株式会社が設置した細野測水所においては、加茂川の流量が、
      同日午後2時30分の時点では毎秒0.57立方メートルであったものが、
      それから同日午後2時40分までの間に、毎秒6.67立方メートルに増加したことが
      観測された。
      その後、園児らの遊泳場所付近では、同日午後3時10分頃には水の濁りが発生し、
      同日午後、3時38ごろには増水が始まっていた。
    ※当初3時30分としていた時間に対し、被告人らは38分への訂正を求めていながらも
       被告人らの冒頭陳述でも3時30分すぎと主張していました。

    5.事故状況
     1)被告人越智は、前期増水発生の直前頃、
      河川から上がってスイカ割りを実施するため、園児らに出水するよう号令をかけた。
      その際、半数以上の園児及び大半の引率教諭は、
      加茂川左岸寄りの浅瀬から左岸の河川敷上にいた。
      引率教諭及び園児は、被告人越智の号令により、
      それぞれの場所から整列することなく三々五々、北寄りの石段に向けて
      概ね、加茂川を南西方向から北東方向に斜めに渡り始めた。

     2)引率教諭及び園児らが加茂川を横断し始めた頃、前記のとおり、増水が始まり
      引率教諭のうち篠田は、危険を感じて、同人より河川敷側にいた園児及び
      引率教諭に対し河川敷側に戻るよう呼びかけ、それを聞いて寺西及び藤井は、
      篠田と共に園児複数名の手を引くなどして左岸の河川敷に戻ったが、
      他の引率教諭や園児は、なおも北寄りの石段に向けて河川内を移動していた。

     3)そこに上流から濁流が押し寄せ、流れが速くなるとともに、
      引率教諭の顔の下まで浸かるほど水かさが増したため、
      一部の引率教諭と園児らが河川内で身動きが取れなくなり、石にしがみつくなどした。
      そして、同日午後3時38分頃、河川内の北寄りの石段付近まで来ていた被告人越智、
      被害者吉川慎之介(当時5歳)、同園児A(当時6歳)及び同園児B(当時6歳)が濁流に
      よって下流に流された。

     4)前記園児Bは、加茂川左岸に流れ着いて助かり、
      前記園児Aは、ふれあいの里従業員に間もなく救助されたが
      前記吉川は、同日午後4時24分頃、北寄りの石段から下流に200メートル流された
      地点で河床に沈んでいるところをふれあいの里従業員によって発見された。

    6.死傷結果
      1)前記吉川は、同日午後4時24分頃、溺死が確認された。
      2)前記園児Aは、加療約1週間を要する頭部皮下血腫等の傷害を負った。
      3)前記園児Bは、加療約1週間を要する左肘擦過傷の傷害を負った。

     
    【Ⅲ降雨による増水が予見できたこと及び遊泳中止義務違反】

    1.降雨による増水が発生する可能性を具体的に予見できたこと
     1)加茂川上流域における降雨を認識し得たこと

      ア.加茂川上流域の前期3地点における1時間ごとの降水量データは、
        インターネットを通じてリアルタイムで入手可能であった。

      イ.平成24年7月20日、愛媛県内全域に雷注意報が、
        同日午後2時5分から同日午後5時10分までの間
        愛媛県上浮穴郡久万高原町及び同県伊予郡砥部町に大雨、
        洪水注意報が、それぞれ松山地方気象台から発令されていた。

      ウ.同日午前中には、同県西条市内の平野部でも降雨があった。
       
      エ.ふれあいの里周辺には水たまりがあり、
        地面が濡れていて、ふれあいの里の従業員に尋ねれば、
        同日午前中にまとまった降雨があったことを知ることができた。

      オ.同日、石鎚山系には、同県西条市内の平野部から見てわかるほど、
        暗雲に覆われた状態であった。

      カ.その2日前から、加茂川上流域で断続的な降雨があったことを、
        インターネット上によって知ることができた。

     2)加茂川は上流域における降雨により園児の遊泳場所付近において急激な増水が
      発生する可能性を予見できたこと

      ア.河川上流域において降雨があった場合、河川下流域において急激な増水が起こる
        危険性があることは一般的に知られるところであり、インターネットを通じて
        容易に発見できる情報であって、被告人らも、かかる知識を有していた。

      イ.加茂川は、石鎚山系から山間部を流れる河川であり、その流域が広く、
        複数の支流が交わっており、ふれあいの里付近のみならず、上流の山岳部での天候の変化によって
        容易に増水が起こり得る地形であり、そのことは地図を一見すれば容易に知ることができた。

      ウ.ふれあいの里従業員は、加茂川のかかる特性や増水の危険性を熟知しており、
        同従業員と事前に打ち合わせを行うなどすれば容易に知り得た。

      エ.現に、ふれあいの里でお泊り保育等を実施していた他の幼稚園や保育園では、
        あらかじめ担当者等が直前の時期に実地調査に訪れ、ふれあいの里の従業員と
        打ち合わせを行って加茂川の様子を尋ねるなどしていた。

    2.遊泳中止義務違反

     1)前記のとおり、加茂川上流域の降雨の影響により園児らの遊泳場所付近において
      増水が発生する可能性があることを具体的に予見できたのであるから、
      被告人らとしては、遊泳事態を中止すべき業務上の注意義務があった。

     2)被告人らは、上流域の降雨が下流域の増水に繋がることを認識しながら
      それを本件川遊びの実施において念頭に置くことなく、ふれあいの里従業員に対して
      一度も、事前打ち合わせを申し入れず、天候の確認や川遊びの危険性、
      注意点等の問い合わせもせず、インターネットなどで天候や川遊びの危険性について
      自ら調べることもせず、引率教諭間で川遊びの危険性について話し合いをすることも
      なかった。
      
      被告人らは、いずれも、2日前から加茂川上流域における断続的な降雨や
      本件当日の雷注意報、大雨洪水注意報等を十分に調査せずに、
      それらを認識していなかった。
      そして、被告人らは、いずれも、増水が生じる可能性を考慮せず、
      遊泳を中止することなく、園児を遊泳させた。

     
    【Ⅳ遊泳を実施する場合の計画準備義務及びその違反】

    1.急激な増水等が起きた場合には、
      園児らを安全に退避させることが著しく困難な状況となることを予見し得たこと
       前記Ⅲの1.の記載の事実に加え

     ① 園児らの遊泳場所付近の加茂川の河床は岩や石が散開して平ではなく、
       こけが生え、成人でも迅速な移動が困難な個所があること

     ② 園児らがいずれも5歳から6歳で、その行動を統制することが容易ではない
       年齢である上、その遊泳能力も未熟であったこと

     ③ 31名もの園児を、被告人らを含めて、いずれも女性で、
       遊泳能力も特別に高くない8名の引率者のみで監守していること

    2.被告人らに課せられる計画準備義務の内容
      契約にともなう園児の生命身体の安全を確保ないしこれを配慮すべき義務、
      社会生活上、河川に幼児を引率するものの負うべき安全配慮に関する条理に
      基づき被告人らには、以下の計画準備義務が課せられていたものである。

     1)ライフジャケットや浮き輪などの用具を準備し、遊泳開始前に園児らに装着させること
      なお、被告人らは、例えば、当時の財団法人河川環境管理財団
      (現在の公益社団法人河川財団)の子ども水辺サポートセンターに問い合わせれば、
      園児の人数分のライフジャケットを調達することが可能だったものである。

     2)あらかじめ、遊泳実施場所付近を実地調査し、有事の退避法・経路・場所等を
      十分に検討・確認しその情報を引率者及び園児全員に対して周知するとともに、
      実際に増水等の危難が発生対場合には
      各園児や各引率者にあらかじめ定めた退避方法等に従って速やかに退避させること

       ア.前記河川環境管理財団が河川での遊泳の危険性や安全に遊泳するために
         必要な事前準備の内容等についてまとめた冊子(水辺の安全ハンドブック)
         を作成し、インターネットを通じて一般に公開して啓発活動を行なって
         いるなど被告人らが、あらかじめ、河川での遊泳にともなう危険性に
         ついて十分な知識を習得することは容易であり、かつ、そうすべきであった。
         また、河川の濁りが増水の予兆であることは広く知られているところであり、
         川遊びの危険を予見するための基礎知識として、前記河川環境管理財団の
    ホームページなどでも周知されていることから、被告人らが、
         こうした知識を事前に習得することも容易であり、かつ、そうすべきであった。

       イ.ふれあいの里の従業員らは、他の幼稚園や保育園がふれあいの里でお泊り保育
         などを行う場合には事前に実地調査に訪れ担当者と加茂川での水遊びに
         関する打ちあわせを行い

         ア)園児らを遊泳させる場所を決めておく
         イ)左岸の河川敷から主要地方道に上がる小道の存在を教える
         ウ)河川の濁りが増水の予兆になることを教える
         エ)そうした危険を察知するためにも、園児の周辺のみならず
          河川を高所より見渡せる場所に監督者を配置するなどすべきであることを
          助言する
         オ)河川の濁りが出て増水の予兆が見られたときなどには、
          左岸の河川敷に避難するのが安全であることを知らせる
         
        などしていた。
        現に、他の幼稚園や保育園においては、加茂川で川遊びを行うに当たって
        増水の予兆となる河川の濁りを早期に察知するためにも、
        河川全体を見渡せる場所に監督者を配置するなどしていた。
        
        したがって、被告人らにおいても、遊泳実施場所付近を実地調査し、
        ふれあいの里従業員らと打合せを行うなどして、有事の退避方法・経路・場所等、
        具体的には、園児らを河川敷に避難させるなどの退避方法を十分に検討・確認し
        その情報を引率者及び園児全員に対して周知することは十分に可能であり
        かつ、そうすべきであった。

       ウ.さらに、遊泳を当日直前までの降水量等を、本件遊泳場所のみならずその
         上流域についても確認し数日前から当日直前までの降水量等を、
         本件遊泳場所を十分に考慮した上で、園児の遊泳範囲を
         園児であっても有事に迅速な移動が可能な水深の浅い範囲に限定させ、
         河川の濁りの変化等を感知して水の濁り等の増水の予兆が認められた場合には
         直ちに遊泳を中止して退避できるよう、例えばふれあいの里があの護岸上など、
         河川を高所より見渡せる箇所に監督者を配置するなどして
         河川増水の予兆に十分留意するといった準備を整えるべきであった。
        
    3.計画準備義務違反

     1)被告人らは、園児らを遊泳させるに当たり、
      ライフジャケットや浮き輪などの用具を一切用意していなかった。

     2)被告人越智のみが、平成24年4月上旬に1度ふれあいの里に下見に赴いたものの、
      加茂川の水深、有事の退避経路、場所などを自ら確認することも、
      ふれあいの里の従業員らに確認することもせず、
      その後も、有事の退避方法・経路・場所等を確認したり
      引率者間で話し合うことをしなかった。

     3)被告人らは、いずれも園児らの周辺で監視を行ったのみであり、
      河川の濁りの変化等を感知して、水の濁り等の増水の予兆が認められた場合には
      直ちに遊泳を中止して退避できるよう、例えばふれあいの里側の護岸上など、
      河川を高所より見渡せる箇所に監督者を配置しなかった。

     4)被告人らにおいて、前記計画準備義務を尽くしていれば、
      平成24年7月20日午後3時10分頃、
      園児の遊泳場所付近に置いての水の濁りが発生した時点で、
      増水の予兆を認識し得る状況にあり
      例えば、園児らを安全な河川敷に退避させることも可能であったのに
      そのような措置をとらなかった。 

    ・・・・
    2012年7月20日、あの日に何が起きたのか
    真摯に受け止め、真実を見つめていきたいと思います。

        
         

      

      

第九回口頭弁論期日

第九回口頭弁論期日
H27年10月1日(水)14時00~
愛媛県松山地方裁判所 西条支部
口頭弁論準備が公開の法廷で行われました。

次回第10回口頭弁論期日は
12月25日(金)14時からとなりました。

西条聖マリア幼稚園の先生方とロザリオ学園からは
「幼稚園の先生は、川遊びについて習っていないし
 増水のメカニズムも分からないのだから予見などできるはずもなく責任は無い」
「ふれあいの里のスタッフに救助をすぐに依頼をした」
「ふれあいの里にもライフジャケットは備え付けらていなかった」
との主張がなされました。

準備書面(9)証拠に基づく主張(PDF)

 
今回、証拠として、田中哲郎先生の「保育園における事故防止と安全管理」が提出され
川遊びの際の自然災害に関する記載はないという事、
他にも、鈴木洋先生の「こんなときどうする?子どものけが」の中でも言及は全くないという事、
幼稚園教育要領からも、幼稚園の教諭に対し安全確保、災害予防の専門性などは要求されていない
という主張がなされました。

「保育における事故防止と安全管理」田中哲郎(PDF)

「こんなときどうする?子どものけが」鈴木祥(PDF)

幼稚園教育要領(PDF)

 
知らないことや、習っていないことは、むしろ、実施すべきでないと思います。
習っていないと主張することを実施するのなら、しっかりと調べて学びを深め対策をとらなければなりません。

今回、浮き輪は救命具ではなく遊具であるなどという反論もありましたが
何も準備をせずに、観光客の方の浮輪で救助していただいたにもかかわらず
こういった主張がなされてしまう事は、とても残念で悲しくなります。
司法の中で向きあうとはこういう事なのでしょうか。
最後まで、この問いを持ち続けることになると思います。

以下、代理人浅野晋弁護士、山本雄一郎弁護士の報告書から
今回の期日の内容をご報告をさせていただきます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学校法人ロザリオ学園9名に対する件について、去る10月1日、
弁論期日が開かれました。
今回は、前回までの弁論期日と異なり、公開の法廷で行われました。
原告は、吉川夫妻を含め5名、代理人弁護士2名が出席しました。

  1. まず、当方から準備書面(9)の陳述を行いました。
    被告側準備書面(7)(8)および(9)の陳述がありました。
    また、被告側から未提出扱いになっていた準備書面(4)の陳述もなされました。
    一方で、準備書面(5)は陳述しないとのことでした。
    この準備書面(4)と(5)は、以前、天候の関係で被告側の代理人が期日に出席できなかったことの関係で、未提出の扱いとなっていたものについて今回の期日で、被告側代理人が陳述するか否かを明らかにしたものです。
      
    なお、準備書面の「陳述」というのは、当該の純義書面に記載されている事項お審理の対象にする手続きです。「陳述」としない場合、その準備書面は手続上、裁判所に提出しなかったのと同様に取り扱われます。

  2. その後、裁判官から双方の代理人に対し、今後の主張・立証の予定について質問がありました。
    当方からは、被告側準備書面(9)に対する反論を行う予定であること、刑事裁判が始まった後に刑事事件の記録を証拠として提出する予定であること、および、増水の様子を説明するための資料として平成27年7月18日に実施した現地調査の動画に説明を付して提出する予定であることを述べました。

  3. さらに、裁判官から私達に対し、本件事故で増水が起きた科学的根拠を、土木工学・河川工学の観点から明らかにしてほしい、との要望が再度なされました。
    当方からは、刑事裁判の記録を見ることにより、増水の科学的根拠を理解する事が可能であるから刑事裁判の記録を証拠提出することによる立証を考えている旨、述べました。
    そして、刑事裁判の審理が終了するのが平成28年3月頃の予定であることを伝えました。

    そうしたところ裁判官は、刑事裁判の記録を待っていると民事裁判の進行が遅くなるため裁判所が「専門委員」を選任し、この「専門委員」に増水の科学的根拠について検討・判断してもらう事も考えていること、および、「専門委員」としてふさわしい人物がいたら 推薦してほしい旨述べました。

    そこで、私達は裁判官間に対し、専門委員として相応しい人物について検討する旨、回答しました。

    なお、この「専門委員」とは、心理に必要な専門的知見を裁判所に提供するための専門家であり
    当事者の意見を聞いた上で裁判所により指定されます。

  4. 以上のやり取りの結果、平成27年11月20日までに、当方が、被告側準備書面に対する反論の準備書面と平成27年7月18日に行われた現場検証の動画を提出することとなりました。
    また、当方が準備書面を提出した後、被告側からの反論が行われる予定です。

  5. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    責任追及は、とても苦しいことです。
    でも、目をそらすことのできない現実です。
    親としての責任についても、自問自答は続いています。
    私達や保護者は当初、裁判についてなど考えてもいませんでした。
    事故直後から、先生方に説明を求めていただけでした。
    「責任」を「訴訟」としてしか受け止めず、そういった「責任」を過度に恐れ、
    「何もお話しできません」「自分が話すことで他の先生に迷惑がかかる」としてきた姿勢からは
    大切なことを見失っているとしか言わざるを得ません。
    私達保護者と一緒に、幼稚園をたてなおしましょう、と伝えましたが
    思いは届くことなく、現在に至ります。

    責任を認めること=事故と真摯に誠実に向き合うことだと思います。
    子ども達が危険に晒され傷つき、
    慎之介は5歳10か月で亡くなったという事実は何も変わりません。
    この重大な結果は、何よりも重いことなのです。
    裁判はいつか終わります。
    事実からは逃げることが出来ない現実を
    どのように受け止め向き合うのかという事が問われているのです。
      
    刑事裁判は12月24日から始まります。

調査報告書に関する掲載記事

平成27年8月21日に愛媛県庁と西条市役所へ提出した調査報告書について
各社報じています。

平成27年8月22日朝刊

愛媛新聞(PDF)

朝日新聞(PDF)

読売新聞(PDF)

毎日新聞(PDF)

 
読売新聞より西条聖マリア幼稚園コメント
「報告書を受け取っておらず、内容を把握していないので
 何もコメントできない」

再発防止のための原因究明の調査でしたが
裁判を理由に協力できない旨、調査委員会へ回答がなされておりました。

サイトにて公開しておりますのでご査収ください。

調査報告書から~事故・事件と向き合うということ

慎ちゃん委員会の調査は、1年3カ月に及びました。
安全危機管理体制に主眼をおかれ、深い考察がなされていると思います。
調査の制度や仕組みが整っていない中で行われた独自調査です。
この報告書は「こたえ」ではなく、ここから考える機会を得るものであり、
一つの提案だという理解でおります。

調査を引き受けて下さった3人の先生方、
調査に協力してくださった全ての方に感謝申し上げます。

当事者である、マリア幼稚園の先生方にも
ご一読頂きたいと思います。

報告書の「はじめに」にあるように、大人たちがそれぞれの立場から
事故・事件とどのように関わり向き合ったのかということが、
問われているのだと思っています。
私達大人が、誠実に「示す」「残す」「伝える」ことが、
結果として、子ども達のためになればいいと心から願っています。

刑事、民事裁判についても、全く同じ思い、考えでおります。

慎ちゃん委員会の調査を通じ、
事故と向き合い、事故を真直ぐに見つめることができたこと、
当時の保護者の皆さんと、冷静に振り返る機会を頂けたことが
次へと繋がる形になりました。

ここから、新たな一歩を踏み出そうと思います。